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「――雑誌展は明日行こう」
「……うん」
何だかんだ戯れていたら、いつの間にかお昼をとっくに過ぎてしまっている。
今日の夜は絆くんと映美さんがうちに遊びに来るからお出かけなんてしてられないや。
もう、尚くんのせいだよ。自分で言ったくせに。
「わぁ! 買い物行かなきゃ」
「僕も行く」
「うん」
うちのマンションにはすぐ隣に24時間営業のスーパーがあるから本当に助かっている。
だけど、ちょっとお高めなやつ。
有機栽培のなんちゃらとか、スーパーフードとか、多分表参道という土地柄上、物価が高い気がする。
――「……見られてる」
「もう慣れなきゃ梨世ちゃん」
日本の皆が私たちが夫婦だと知っている。
だから、買い物に行ってもいつも誰かに声をかけられたりして、いつも私はビビってる。
前みたいに隠れなくていいのは楽だけど……
尚くんは優しくファンサービスをしてあげたり、今はプライベートだから写真は撮らないでねと言う代わりにサインを書いてあげたり余裕だね。
それに……
「梨世ちゃん、梨世ちゃん」
「ん?」
「パン」
「そんなにいらないと思う……」
カートを押す私に、めり込むようにくっついてきていっつもスーパーの中に併設されている美味しいパン屋さんでパンを3斤買ってるから超目立つし。
本当に彼の中ではふたりのセカイなんだよね。
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