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「英語、話せたの?」
「話せるわけねぇじゃん、全部行き当たりばったりだよ、それに何度も死にたくなった。何度も死に損なった。なんで生きてるんだろうと思った。だけど天は俺を生かした、こんな意味のない命」
「……なんで、そんなこと言うの?」
急に曇った彼の表情に、苦しくなった。
ひとりで生きていくことは、孤独を常に背負うこと。
そう、思っていたんでしょう?
「普段は意味ないなんて思わなかったよ。やりたいこと出来て、施設の生まれなのに偏見も持たずに良くしてくれて、幸せだって感じた。だけど……悪魔の子なんてやっぱりいらないんだって、心の奥にいつだって根付いてたから」
「……兄さんも、つらかったんだね」
「……少しでも、誰かに必要とされたい思いが溢れてた」
「すごく、わかるよ」
襲ってくる孤独の闇は、人にはわからないことだらけで。
ひとりで消化できなくて、死にたいと思ってしまう。
「……そして、大学に通いながら軌道に乗ってきた事業を大学卒業と同時にちゃんと拠点をアメリカにして、小さかったけど……情報誌の会社を始めた」
「今や、アメリカでも有数の企業になっちゃったわけね」
「あぁ、皆のおかげで。そのたぐいのパーティで出会ったのが、紗柚だよ」
「そうなんだ」
兄さんなら、たくさんの女性からきっと声をかけられるはずなのに、どうしてわざわざ10個も下のご令嬢と付き合うことになったんだろう。
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