9 一歩ずつ

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「紗柚は……無垢で、天使みたいなオンナだ。当時は普段カラコンで左右同じ目の色にしてたんだけど……たまたま取れたとこを見られて。俺の悪魔の目を、そんなに綺麗な目見たことないって言ってきた」 「そうなんだ」 「何も知らないこの子には、俺が全部教えて、俺しか知らなければいいって思った」 「……兄さんも、かなりの独占欲の持ち主だね」 「当たり前だろ」 禅さんもきっと、自身と向き合ってくれる女性に会いたかったんだね。 「なんだかんだ、もう付き合って2年経った」 「わお、いいね」 「飽きるどころかどんどんハマってく……」 「ふふ、僕も梨世ちゃんにそんな感じ、彼女の底抜けのおバカさには尊敬出来るものがあるよ」 「それ、聞こえたらぶっ飛ばされるだろ」 「意外にね、力強いし」 お互いの相手を自慢しあったところで、途端に禅さんの表情が険しくなった。 「……俺と、仕事しない?」 「え?」 「いずれ俺は、紗柚の親に認めてもらって紗柚とロスで暮らしたい。だから日本でアイドルなんてさせてたらどうなるかわかんねぇよ」 「!」 待って、そしたら紗柚ちゃんの気持ちが―― (禅との結婚をパパに認めさせてくれたらアイドルやってもいいわ) 「……でも、俺に何か隠し事してるみたいだけど、アイドルをやってみたい紗柚の気持ちも尊重したい」 「うん……」 「てことで考えた」 「?」 「ジュピプロ海外支社作れよ」 「は?」 だけど、きっとそれは僕自身の成長にも繋がる……思っているよりも現実味を帯びた、未来の話。
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