1 幸せな日常

19/21
346人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
「ねぇ、絆、こういう雑誌どう思う?」 「かなりターゲット絞ってんな、なになに……」 「木暮社長、こういうのって売れるかしら」 「あー、どうかな……思ったよりトレンド抑えてないですね」 「???」 3人とも何の話してるんだろう。 全然わかんない、どうしよう。 お客さんはたくさんいて、展示されている雑誌を皆思い思いに捲って読んでいる。 順路の通りに進むと、国ごとの雑誌コーナーに分かれていて、突飛な見出しやすごく売れた号や、有名なモデルさん、ブランド、飲食店の記事は大切に額縁に入れられて、日本語訳もついている。 「アメリカだぁ」 やっと私の知ってる国がやって来た。 それにファンの人にアメリカの方いるし、少しは身近に感じるかも! と思いながら進んでたら。 「あ、はぐれた……」 やばい。 尚くんが一瞬手を離した隙に、私は彼を見失ってしまった。 きっと、彼も泣きそうになって私を捜してるに違いない。 ――あれ? 「……これ、尚くん……?」 ふと横を向くと、読めない英語の記事ででかでかと紹介されている尚くんがいた。 ……でも、ちょっと違う。 黒の短髪に……銀縁眼鏡にスーツ。 顔は完全に尚くんだけど、彼は黒髪じゃないし。 最近の号だから、昔の尚くんってわけでもなさそう。 え? 何? 誰……? 「……あ、ローマ字発見。Zen Kogure……ぜん、こぐれ?」 尚くんと同じ苗字だ。 あ、私もだった。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!