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「ねぇ、絆、こういう雑誌どう思う?」
「かなりターゲット絞ってんな、なになに……」
「木暮社長、こういうのって売れるかしら」
「あー、どうかな……思ったよりトレンド抑えてないですね」
「???」
3人とも何の話してるんだろう。
全然わかんない、どうしよう。
お客さんはたくさんいて、展示されている雑誌を皆思い思いに捲って読んでいる。
順路の通りに進むと、国ごとの雑誌コーナーに分かれていて、突飛な見出しやすごく売れた号や、有名なモデルさん、ブランド、飲食店の記事は大切に額縁に入れられて、日本語訳もついている。
「アメリカだぁ」
やっと私の知ってる国がやって来た。
それにファンの人にアメリカの方いるし、少しは身近に感じるかも!
と思いながら進んでたら。
「あ、はぐれた……」
やばい。
尚くんが一瞬手を離した隙に、私は彼を見失ってしまった。
きっと、彼も泣きそうになって私を捜してるに違いない。
――あれ?
「……これ、尚くん……?」
ふと横を向くと、読めない英語の記事ででかでかと紹介されている尚くんがいた。
……でも、ちょっと違う。
黒の短髪に……銀縁眼鏡にスーツ。
顔は完全に尚くんだけど、彼は黒髪じゃないし。
最近の号だから、昔の尚くんってわけでもなさそう。
え? 何? 誰……?
「……あ、ローマ字発見。Zen Kogure……ぜん、こぐれ?」
尚くんと同じ苗字だ。
あ、私もだった。
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