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ジュピプロは今年もカウントダウンパーティをいつもの焼肉屋さんで開催して、明け方までどんちゃん騒ぎをしたあと、僕と梨世ちゃんは家に帰りついた。
「梨世ちゃん、明けましておめでとう」
「尚くん、明けましておめでとう、今年もよろしくね」
「うん、あ、梨世ちゃんブログ書こう?」
「うん!」
興奮冷めやらぬうちに、僕は梨世ちゃんにファンの人たちへの新年の挨拶をするように促すと、彼女はケータイを取りだし、何やら黙々と打ち込んでいる。
「……梨世ちゃん、いつもより集中してない?」
「う、うん……なんか、変換出来なくて」
「え? どれどれ」
「明けましておめでとうって、打ってるんだけど……」
「『Happy New YAER』……って、嘘でしょ」
「ん?」
「イヤー、の綴り」
「ほ?」
何か間違ってる?という顔をして、梨世ちゃんがキョトンとしているのがなんだか可愛いのだけど、世間に恥ずかしすぎて心配になる。
「Year、だよ」
「!」
「まさかずっと勘違いしてた?」
「うん、何年も……」
「…………」
僕はそのとき、確信した。
梨世ちゃんは……やっぱりなかなかおバカだ。
これから、彼女には英文を必要とされる機会があったとしても、僕が絶対に最終チェックをしよう、そう心に誓った。
「尚くん、今年も幸せな1年にしようね」
「うん」
掠めた唇に身を任せるようにして、今はやっぱりキミが欲しい、と耳元で伝えると……ケータイなんて投げ捨てて僕に抱きついてくるキミが、絶対に今年も世界で一番可愛いね。
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