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――――……
――……
「はぁい、禅です」
――「火野です……」
「…………こんな夜中に何の、用事」
舐めたばかりの緑の飴を、なんだか面白くなくてガリガリ噛む。
――「すいません、そちらは夜中でしたね。でもそんなことも言ってられません。あんたらの両親が今、会社に来ています」
「っ、え」
尚が。
アイツらに壊される。
――「尚が、これから両親に会います」
「っ、ダメだ!! なんでっ、星田さんに俺、尚を守ってって、絶対会わせないでって、忠告したのに!!」
――「尚が……自分で両親に会うことを、決めたんです」
「……っ」
な、んで?
理由がわからないし、想像すら出来ない。
反対にぐちゃぐちゃに壊れた尚が簡単に想像出来てしまって、俺はやるせない思いに胸が張り裂けそうになった。
――「これは、禅さんの意見を聞いてる訳じゃない、ただの報告の電話です」
「聞きたくない!!」
――「お願いです聞いてください! 尚があなたの分まで戦おうとしてます、だから兄貴としてわかってやってください!! 終わったら頑張ったね、って褒めてやってください、今の尚には……あなたが味方であるっていう確信が、必要なんです」
「……っ、そんなのっ」
……尚、お前がどんな話をして、どんな結果になろうと……俺はお前の元にすぐに駆けつけることが出来ない。
それが悔しくて悔しくてたまらない。
だから俺の手の届かないとこで、尚がアイツらに傷つけられるのが耐えられない。
だけど、俺は――
「尚は、俺のたったひとりの大事な弟だ。何があってもアイツの味方でいる」
――「ありがとうございます、尚に……伝えます」
それだけは、離れてても変わらないから。
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