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「……尚くん」
「もう、大丈夫。覚悟は出来た」
「うん、わかった。止めたりしない」
尚くんの決意を、絶対に無駄にしたくないから私は全力で応援して支えることにした。
外の雨は、まだ止むことを知らない。
「尚、いいのか、本当に」
「あぁ、絆……ありがとう」
「さっき、禅さんに電話した。あの人は何があってもお前の味方でいるって」
「っ、兄さんが……?」
「そう」
「……ありがとう、絆、兄さんのこと嫌いなのに聞いてくれて」
「だから、嫌いとかではないって言ってんだろ」
「ふふ」
絆くんも、尚くんのためにありがとう。
私たちは緊張しながらも、ふたりにお待ち頂いている応接に向かって足を動かす。私にとっても、これから起きる出来事はきっと人生の中で大きなものになると確信してる。
――「大変お待たせいたしました、ただいま社長をお連れしました」
ガチャ――と、絆くんが扉を開けると、そこには尚くんによく似たふたりが並んで座っていた。
!!!
この人達が……尚くんの、本当の親御さん。
ふたりともすごく整った顔立ちのはずなのに、どうしてかくすんで、美しくは見えないよ。
「あなたは?」
「えっ」
そして、私がいるとは思ってなかったのかすごく怪訝な顔をされ、急に誰かと問われる。
「はじめまして、私は、木暮尚の妻の梨世です」
だけど、怖じ気づいてる訳にはいかない。
私は、私。尚くんの今の家族だから。
尚くん、入って大丈夫だよ。私がいるよ。
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