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パパはいないから、バージンロードはママと歩くの。
式自体は、本当に親しい仲間とジュピプロのメンバーしか呼んでないから、取引先の人たちは披露宴から出席なんだ。
「明日、尚くんのこと……多分かっこよすぎてちゃんと見れないと思う」
「僕もきっと直視出来ない……」
チャペルの確認を終えて部屋に戻ろうとすると、尚くんが腕を引っ張ってきた。
「ちょっ、どうしたの?」
「……梨世ちゃん」
「ん?」
「好き」
「っ、な」
その『好き』は、一瞬にして空間を支配した。
ガラス張りの壁一面には、夜の真っ黒な海が見えている。その奥に、都会のビルのキラキラが瞬いていて、ミステリアスな雰囲気を作っている。
そんな風景に閉じ込められた私たちは、やっぱり世界にふたりしかいないみたいに感じるの。
「明日、キミは……僕と誓いのキスをする」
「うん、そうだね」
「キミは、どうしてそんなに余裕なの?」
「えっ」
尚くんが更に私の腕を引っ張り、私の手を自分の胸元にあてた。
すると彼の鼓動が……すごく早くなってるのがわかった。
「……僕ばっかりこんなになって、恥ずかしい。すっごく、ドキドキしてる。楽しみなのに、緊張して……苦しいよ」
「……余裕なわけないよ、私だって尚くんとの結婚式……すごく緊張してる」
「本当に……?」
「当たり前でしょ」
彼の胸元にあてた手を、彼の指に絡ませて手を繋ぐ。そのまま、明日の練習するみたいにチャペルの真ん中を歩く。
「ふふ、ありがとう梨世ちゃん」
「えっ?」
「僕と……同じ目線に合わせてくれて」
「合わせてるわけじゃないよ、最初から同じなんだよ」
そのままチャペルを出る頃には、彼の表情も柔らかく笑顔に戻っていた。
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