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――バタン
式場のホテルの部屋に戻ってきた私たち。
すると、尚くんはふかふかのベッドに私を突然組み敷いた。
「っ、あ」
「……ぎゅって、させて」
「……ん」
上から覆い被さるようにして迫ってくる彼は、余裕のない瞳で私を熱っぽく見つめる。そのまま横にごろんと寝転んで、向かい合う形になる。
「……キスの、練習……させて」
「えっ」
それは、尚くんに出会った当時……恋人だけど、プラトニックでいると言ってたときを思い出させた。
私が、初めてこの人を『欲しい』と思った瞬間だったの。
「練習って、何するの……?」
「いいから、黙って……」
そうして、当時のように私の唇を、ゆっくりと尚くんの白くて綺麗な細い指が這う。くすぐったいようなぞわぞわした感覚に包まれたと思ったら、隙間を強引に割って、指で舌を掴まれる。
「んっあ、はっ……」
歯茎の裏や、舌のざらざらを確かめるように彼の指は悪戯に、私の唾液を弄びながらぴちゃ、と鳴る音を楽しんでる。
今は、当時とは違って……彼を欲すれば、もらえる。
それが嬉しくて、自分から彼の指に舌を絡ませる。
「あっ、梨世ちゃん……えろ」
「っ、はぁ……」
「キミって、やっぱり……ものすごく淫乱、だよね」
「そんな、ことなっ……」
ちゅる、と当時と同じように私の絡め取った唾液を指ごと舐める。妖しいガラス玉は、獲物を狙う獰猛な獣みたいに私を捉える。
それを見たら、私の理性は彼よりも早く吹っ飛んでしまった。
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