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「…………お願い、あの後ろ姿、カメラに残して」
「…………はい!」
――パシャ……………
梨世ちゃんが、扉の方に向かう姿が天使みたいだった。
やっぱり羽が生えてるんじゃないかって錯覚して。
僕は何度かまばたきをした。
綺麗すぎて、苦しくなったよ。
あぁ、この人が自分の妻なんだ。
この人と自分の子が、お腹にいるんだ。
そういうのを改めて自覚したら胸がじーんと熱くなるのがわかって、僕は世界で一番の幸せ者だと思うほかなかったよ。
――パシャ……
「……ちょっと、僕じゃなくて梨世ちゃん撮って」
「すいません……あまりにも社長の表情が温かくて、梨世さんを見つめる目線が美しくて、撮りたくなってしまいました」
「えっ……」
僕の……表情?
「……本当に、愛してらっしゃるんだなぁって思いましたよ」
「……ふふ。お前、いい仕事するようになったね」
雑誌で見た一番最初のキミより……
何倍も、何百倍も今のキミが好きだ。
毎日毎日、好きが増えていくよ。
梨世ちゃん。
可愛くて、優しくて、ちょっとおバカで。
綺麗で、真面目で、素直で、強い。
僕は……そんなキミが毎日笑っていられるセカイを作るよ。
だからこれからも美味しいご飯作って、モデルさんして、可愛いママになって僕の隣で生きてください。
「――それでは、新郎も一度中座致します」
僕は扉まで一緒に歩く人に兄さんを指名した。
兄さんは驚きながらも嬉しがって僕の目の前に来て、ハグをして、握手をしてくれた。
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