16 Happy Wedding!

22/30

346人が本棚に入れています
本棚に追加
/541ページ
僕が、12年前にオーディションを受けた日。 そこにいたのが、この……前社長。 ――(木暮尚 13歳です) ――(……君は、男の子?) ――(はい) ――(すごく……可愛いね) そう言われて、僕を合格にしてくれた。 僕を、男だってわかってて……女の子として、モデルの世界に入れてくれた。Re: グループ……そう、女性誌の社長。 この人が雇ってくれなかったら、今の僕はない。 蘭華さんに恩返しも出来ていない。 ――(奈緒ちゃん、君は……) ――(僕は、学校も行ってないです。だから、撮影スケジュールは好きなように組んでください。僕はどんなにキツくても、働くから) ――(そんなにきつくするつもりはないよ。ねぇ、そんなに自分を追い詰めるのはどうして?) ――(僕に出来ることはこれしかないから。これも出来ないとか、きついとか、そんなこと言ってたら僕の存在意義はない) ――(奈緒ちゃん、君の姿を見て……君を真似したい人がいる。それだけで誰かのためになってる。それは立派な存在意義じゃないかい?) 死んだほうが良かったって言われ続けた僕に、蘭華さんとは違う向きから、少しずつ自信をつけさせてくれた人。 僕の髪を綺麗だと言ってくれた。 僕の肌を人形のように美しいって言ってくれた。 僕のパーツすべてが、世の女の子の憧れだと言ってくれた。 ――(奈緒ちゃん、君の趣味は?) ――(カメラ) ――(うん、じゃあそれだけプロフィールに入れるね) ――(はい) 僕を、木暮尚を……小暮奈緒にしてくれた僕のかけがえのない大事な恩人。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

346人が本棚に入れています
本棚に追加