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「さいかわさん、この人が……尚を奈緒ちゃんにしてくれた人なの」
読み方を聞いて、私の中の記憶が少し何かを思い出そうとしている。
「さいかわさん……さいかわさん……ママ、なんか聞いたことある気がしない？」
「あら、梨世ちゃん忘れたの～？ 犀川さんって、Re:leafにコーデ送ったあなたに、読者モデルになりませんか？って言ってくれた人じゃない！」
「あっ！」
「えっ？ 由梨子さん……それ、本当なの？」
――て、ことはだよ？
尚くんを当時、オーディションした人と……私に、モデルの道を開いてくれた人は、同じだったってこと？
「梨世ちゃんが読者モデルになってすぐ、社長が変わるとかなんとかで、確かママ、モデル契約書2枚書いた覚えがあるもん、梨世ちゃん、あなた絆くんと結婚したって言ったって……まだ当時未成年だったから」
「えっ……そうだっけ」
「そうよ～、梨世ちゃん……なんか紙もらってきたって言うから見てみたら大事な書類だったのよ？」
当時の私は、今の私の数倍バカだったのかな。
今ならまだ、契約書とかはなんとなくわかるもん。
でも……不思議だね。
そこから、尚くんと縁があったのかな、なんて思ったら。
「じゃあ、梨世ちゃん、決まりね。アタシなんかより、梨世ちゃんが直接この人にアポ取って会いに行ったら……元気な梨世ちゃんを見てきっと、喜ぶわよ？ 今はジュピプロ所属の木暮梨世だけど……当時は、Re:leafと契約を結んでいた、いち読者モデルの火野梨世だったんだから」
「……はい、わかりました、蘭華さん！」
きっと、尚くんも……喜んでくれるよね。
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