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「ママへ――」
一生懸命、自分で考えた文章なの。
尚くんにも、ママに渡すんだから、って誤字脱字くらいしか指摘してもらってないよ?
私を育ててくれたママへ。
そして、私を受け入れてくれる尚くんの家族へ。
「ママ。私の名前、つけてくれてありがとう」
普通の感動的な手紙とは、ちょっと違うかもしれない。
「由梨子の梨は、梨世の梨よって言ってくれたとき、私はママの子供だと思えて嬉しくなりました。パパが居なくなっても、ママはずっと私をひとりで育ててくれたから、私はママみたいに強い女性になりたいと思いました」
文字を追って読んでいくと、だんだんと滲んでいく視界。必死に、必死にこぼれ落ちるのを我慢しなくちゃ。
「ママは……私を本当に大切にしてくれました。
私は勉強がものすごく出来なくて高校もやっとのことで卒業しました。だけど就職ではなく、モデルという不確かな道を選びました。
本当なら、ママを支えるために就職したほうが、経済的に助かったのかも知れなかったけど、私はママが背中を押してくれたから、やっと見つけた夢を諦めないでいれました」
ママ、ありがとう。
ママの子供で、本当に良かったよ。
「ママ、こんな手のかかる娘を、まだまだ立派とは言えないかも知れないけどひとりの大人にしてくれて、ありがとう。ねぇ、ママ。私のお腹には今、可愛い可愛い男の子が、いるでしょ?」
世間にはまだ性別を公表していなくて。
ここで初めて公に伝えたから、それを言葉にした途端、会場全体が祝福の歓声に包まれた。
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