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「……だからこの子が産まれたら、ママが私にしてくれたみたいに尚さんとふたりで、たっぷりの愛情で愛してあげたいです。ママ、私を産んでくれてありがとう。これからも迷惑をかけてしまうかもしれないけど、ずっとずっと……私はママの子だよ。ママの子供で良かったよ」
会場もすすり泣く音がたくさん聞こえて、そのことがまた、私の涙腺を緩ませる。
「そして……尚さんのご家族の皆様、私を快く家族として迎えてくださり、本当にありがとうございます。尚さんは、本当に優しくて、一緒にいれて本当に本当に……幸せです。至らない点もたくさんあるとは思いますが、末永くどうぞよろしくお願いいたします」
そこで、読んでいた便箋を丁寧に閉じるの。
落ちた涙で少しだけしわくちゃだ。
大きく一礼をすると会場全体からは盛大な拍手が湧いて、私はただひたすらにハンカチで涙を押さえていた。
隣にいる尚くんは……あはっ、やっぱり号泣してるね。
披露宴って、結婚はしたけど私たち未熟な夫婦をちゃんとした場所で皆に認めてもらうためにあるんだと思うの。
だから、主役は私たちじゃない。
今、ここに来てくれているすべての人たちだ。
私たちふたりの為に、時間を割いてお祝いにきてくれている。
そのことが嬉しくて……そして、感謝しかない。
「梨世ちゃん、渡そっか」
「うん……」
私と尚くんは、それぞれママと蘭華さんに大きな花束を渡すの。
尚くんが蘭華さんに渡しているところを、不思議そうに見ている人たちもいたけれど、今日でこのふたりの関係は……世間に明らかになったに違いないよ。
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