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――「……あっと言う間だったね」
「ね」
結婚式の、余韻にひたる。
誰もいなくなった会場を見渡す。
大きな二次会はしないの。
ゆっくり、尚くんとふたりの時間を過ごしたい。
ママと蘭華さんと禅さんとシローさんは、Az barを貸しきりにしてちょっとした内輪の二次会をするんだって。
「梨世ちゃん……抱き締めていい?」
「えっ、急にどうし……」
すると、突然。
私がそう言い終わるか終わらないかで、尚くんがプラネタリウム色のドレスごと私をきつく抱き締めた。
周りの音が、一瞬にして消えて――
「……梨世ちゃんっ」
聞こえるのは、耳元に私の大好きな彼の声と。
感じるのは、私の大好きな彼の匂い。
「……今日、ありがとう。ううん、今日だけじゃない。時間をかけて僕のためにあんな素敵なサプライズもありがとう。僕を愛してくれてありがとう。
……僕と、結婚してくれて…………ありがとう」
「…………っ、尚く」
声が、出せなかった。
涙が、尚くんの胸を濡らすほど止まらなくて、息も出来ないほど満たされてる。
遠くから、お台場の海の……波の音が少し聞こえる気がする。
静けさに、全てを奪われて。
残るのは研ぎ澄まされた感覚だけ。
「愛してる」
「っ、私も……愛してる」
しばらく抱き締め合いながら、お互いの鼓動を確かめあった。
今こうして生きていること、出逢えたこと、赤ちゃんがいること……全てを奇跡だと感じたの。
やっぱり……いつだって甘い甘いふたりのセカイ。
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