17 飛躍

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 幸せな結婚式が終わってすぐ、私と尚くんは御礼の挨拶回りにたくさんの取引先に向かった。 のだけれど…… 「尚くん、私……今産休だったよね?」 「そうだね、ごめん。ちょっと油断してた」 どの社に出向いても、新たな仕事を依頼される。 産休中に申し訳ないのですが……と言われつつ、サマーセールに(あやか)ったブランドのイベントにゲストとして呼ばれる仕事が今日だけで5件も入ってしまった。 「ほんとごめん、梨世ちゃん。僕がキミの体のことちゃんと考えてお断りすればよかったよね」 「いや、でも……ありがたい、ことなんだよね」 仕事をもらえること自体は、やっぱり人気商売だからありがたいの。嬉しいし、頑張りたいって気持ちの方が強いから。 それに、こうして丁寧に縁を繋いでいる尚くんを尊敬してるから私も妻として応えたい。 「でも、一番は体調だからね、ちょっとつらいって思ったらすぐ言ってね?」 「うん、ありがとう、大丈夫だよ」 今にも心配しすぎて泣きそうな尚くんを(なだ)める。 私はゲスト出演やサイン会とかが本当に苦手だからそっちのほうが心配なの。前に失敗した一時間店長体験のときみたいにお客様から話しかけられたらやっぱりしっかり話せる自信はない。 「ゲストって何するの?」 「そのブランドの新作を着て、立ってればいいよ、こないだみたいにコーデ相談とかはないから、ニコニコしてれば大丈夫。何件か取材は入るかもだけど」 「取材…………」 「大丈夫、僕もいるから」 「う、それならいいや」 どうしてこう、カメラ向けられて撮られるのは好きなのに……極度の人見知りなんだろう、私って。 私を撮って、私を見てって思うのに……話すとなるとなかなか上手く行かないや。
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