20 同じイキモノ

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尚が、日本に急に帰った。 今日は一緒にロサンゼルスの繁華街を回って、今のこちらのトレンドを案内しようと思っていたのに。 でも、俺にも誰にもしっかり話せる時間がないくらい切羽詰まっていたのだろう。 そして、梨世さんに何かあったのだろうか? 「っ、梨世が!? 嘘だろ!?」 「……火野?」 そう考えていた束の間、火野が誰かと電話しているようで、その声が叫ぶようで震えるようだったから……俺はそちらに耳を傾けた。 「これで二度目だろ!? なぁ、尚……しっかりしてくれよ、俺はもう梨世を守ってやれねーんだよ、お前が守らなきゃ、アイツを誰が守るんだよっ!!」 ……二度目? 尚? 「火野、電話代わってくれ! 尚なんだろ!?」 「っ、禅さん……」 「っ、尚!? 俺だ、禅だ。何があった?」 ――「……兄さん、ごめん、勝手に消えて」 「そんなのはいい」 ――「梨世ちゃんが……」 尚から聞いた話は衝撃的だった。 尚が……帰りたいって言った時に帰してあげればよかった。 そうすれば、免れられたかはわからなくてももう少し早く日本に着いていたかもしれないと考えると悔しかった。 「尚、ごめん……」 ――「なんで兄さんが謝るの……とりあえず、僕は梨世ちゃんの傍にいます。絆にも、よろしく伝えといて」 そう言って電話を切った尚と、俺のとなりで頭を抱えている火野。 今愛している女が、かつて愛していた女が、何者かに襲われる様なんて……俺は想像しただけで心臓が止まりそうだった。
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