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私の言葉に、尚くんは目を潤ませて僕もありがとうと言ってくれた。そして、禅さんに向き合って……彼は口を開いた。
「兄さん」
「ん?」
「ありがとね」
何気なく尚くんが放った『兄さん』は、最初のぎこちない『兄さん』とは違って……今は愛と温かみに溢れていた。
「うぅ……尚ぉ~~~」
「うわっ、ちょっ」
「俺……お前に出会えて良かった、あの日……お前をテレビでたまたま見つけられて本当に良かった」
「……兄さ」
「本当に嬉しかった、俺に家族がいたってことが……本当に本当に嬉しかったっ……」
今にも眼鏡を外して泣きじゃくりそうな震えた声をしながら、禅さんは尚くんにそう伝えていた。
隣で微笑む紗柚ちゃんは、禅さんを想う気持ちで溢れているのがわかって、私も何度目かの兄弟愛を目の当たりにしてうっかり涙腺が緩みそうになった。
「~~~!」
まなの声でその場は再び笑顔に溢れ、抱っこしてみたいと言う紗柚ちゃんにまなを預けた。
「わぁ、赤ちゃんっ……可愛いわ。こんなにちゃんと抱っこするの初めて」
「~~~」
「ほら、まな、紗柚ねーねだよ」
その姿を見て、紗柚ちゃんも将来……なんて思った私は、今から更に幸せしかない未来に想いを馳せたりして。
ソファーに置いてあるさっき家族写真を撮った奈緒ちゃんのカメラを眺めながら、大好きな旦那さまに似た大好きな息子のふわふわの髪を、包むように優しく撫でた。
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