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「「「お疲れ様でしたーっ」」」
「皆、僕と梨世ちゃんは今日は残業しないで帰るからね! 明日いないからね! なんかあったら蘭華さんか絆に言ってね、それか電話してね、じゃ!」
「ちょっ、尚くん……待ってよ!」
あまりにもすぐに帰る尚くんに戸惑いながらもついていくしかない私。
「まりさん、社長どうしたんすかね?」
「あー、あはは、尚ぽんね。今日1日いつにも増しておかしかったのは、明日梨世ちゃんのお誕生日だから今日の夜から旅行に行くんだって、だから楽しみ過ぎてあんな感じ」
「なるほどー、梨世ちゃんのことになると周りが見えてないですからね」
「ったく、ちゃんと仕事全部終わらせて、残して行かないところが逆にムカつくぜ」
皆が何やらぶつぶつ言ってたみたいだけど関係なかった。
もう、尚くんには私しか見えていないみたいでぎゅーってされながら歩いているからかなり歩きづらいし、家まで帰る道のりも今日はいつもと違ってくっついてくる頻度が激しい。
――パタン
「梨世ちゃん、家についたわけだけど」
「うん」
「僕から渡したいものがあります」
「えっ?」
尚くんが棚からおもむろに取り出したのは、可愛いスワロフスキーがついたカードと何かのチケットだった。
「わぁ、綺麗……」
「開けてみて」
「……えっと……梨世ちゃんへ、ご招待状」
「ふふ」
「……東京発……草津温泉駅行……温泉!?」
「うん、旅行行こ、子供産まれたらなかなか出来ないから、僕と梨世ちゃんの初めてのお泊まりのお出掛けね」
「!」
尚くんが考えてくれてたことが嬉しすぎて、驚きを隠せなかった。
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