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――「尚くんと電車っぽい乗り物に乗るの初めて!」
「そうだね。僕たち目立ってる、ふふ」
東京駅に着くなり、サングラスをかけた私たちふたりは髪の色がお揃いだし、雰囲気ですぐにバレてしまう。
新幹線の車内に入り、席に座ると尚くんは私に覆い被さるように抱き締めてきた。
「ストップっ!」
「なんで、膝枕してよ」
「!?」
「僕、赤ちゃんと近づいてみたい」
「……尚くん?」
座っている私のお腹に猫みたいにすりすりくっついてくる彼は、赤ちゃんが気になっているみたいで。
耳を近づけてみたり触ったりいろいろしている。
「まだちっちゃいから多分何もわからないよ?」
「いいんだ、中にいるのは間違いないでしょ。ママとパパと赤ちゃんの3人で旅行だね」
「あ……」
尚くんは、ちゃんとパパとしての自覚が既にあるんだと思うと嬉しくて、でも少しだけ寂しくなった。
「……ふたりの時間も終わっちゃうのかな」
「梨世ちゃん……?」
「ちょっとだけ、寂しくなっちゃって」
「何言ってんの。ふたりのセカイは永遠でしょ。赤ちゃんとの家族のセカイはまた別のところにあるの。僕と梨世ちゃんはずっと同じイキモノで、一生変わらない夫婦だよ」
「……そうだねっ、尚くん……ありがと」
外の風景が、都会の夜景から夜の山々に変わっていくのを見ながら、その幸せにたくさん浸った。
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