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――「わぁぁ!」
「すごいね、幻想的な景色……」
温泉街についたのは夜遅くだった。
湯けむりが上がる湯畑と呼ばれる場所や、源泉が涌き出る公園は月明かりにその湯気が照らされてほわほわと不思議な空間を作っていたの。
「梨世ちゃん、ここからちょっと素敵な場所に行きます」
「ん?」
「少し歩くけど、大丈夫?」
「うん!」
「夜中じゅう遊び尽くす覚悟は出来てる!?」
「えっ!?」
東京より、少し寒くて所々雪が積もっているこの街を尚くんに手を引かれ散策していると一件のバルに辿り着いた。
――カランカラン
「こんばんわ……」
「あら、もしかして尚ちゃんと梨世ちゃんかしら? 蘭華から話は聞いてるわ」
「!?」
「はい、初めまして、木暮尚です。隣が妻の梨世です」
「は、初めまして!」
また見知らぬニューハーフさんが登場した。
どうして蘭華さんてこんなに県を跨いでまで顔が広いのか益々謎が深まる。
「初めまして、ワタシはユキ子ママよ」
「は、初めまして……ユキ子ママさんも蘭華さんの……?」
「そう、蘭華とは二丁目で一緒だったの、ワタシは地元がこっちでね、お店を出したのよ」
辺りを見回すと観光客で賑わう広い店内にバーカウンターやダーツ、楽器が並ぶ演奏ステージがあり、窓からはさっきの温泉街の夜景が見えて不思議。
店内にまさかの足湯もあって、ちょっとしたエンターテイメント空間だった。
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