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「楽しいっ!!」
「でしょ、誕生日の瞬間はここで迎えて朝は旅館にチェックインね!」
赤ちゃんが産まれたらなかなかはしゃいだり出来なくなるからってことで、とにかく夜通し遊ぶことを選んでくれた尚くん。
誕生日当日の明日はゆっくりふたりで過ごすんだって。
ノンアルカクテルを作ってもらい、足湯に入りながらちょっとしたおつまみを食べて、のんびりする。
「あとでダーツやろ、ビリヤードもカラオケも出来るから梨世ちゃん歌ってもいいよ!」
「私歌下手だもん、尚くん歌ってよ!」
「僕、歌ったことないからダメ」
「そうなの? じゃあ初めての歌聞かせてよ」
「ふたりきりのときね?」
尚くんのこと、まだまだたくさん知らないことがある。
それが新鮮で、幸せな気分になる。
「ねぇ、梨世ちゃん。あと5分で0時ちょうどだよ」
「本当だ……」
「キミが僕のものになってから迎える初めての誕生日」
「うん……」
「僕も自分のことのように、嬉しい」
「……本当に?」
「うん。ねぇ、またストーカー発言していい?」
「な、なに……?」
尚くんはニヤリと笑って頬を包み込み、私の顔に影を落とすようにして見下ろしてきた。
「3年前から、キミの誕生日……ひとりで密かに、祝ってた」
「!」
「まさか、目の前で祝える日が来るなんて思わなくて……幸せで僕の心臓が破裂しそう」
少し潤んだ瞳に、私に注がれる歪んだ笑み。
あなたの独占欲がまたひとつ、降ってくる。
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