1 幸せな日常

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「梨ー世ーちゃん、遊ぼー!」 「…………」 尚くんのいつも着ているラノンのワイシャツに丁寧にアイロンをかけていると、この人はなかなかすごい勢いで邪魔してくる。 「尚くん、邪魔」 「梨世ちゃん……酷い」 だって、1枚終わった隙にアイロン台の上に上半身べたーって、手まで伸ばしてくっついてるんだもん、邪魔でしょ。 「あったかい……」 「わかったから、邪魔しないで」 「じゃあアイロン終わったら僕と遊んで!」 「うん、だから待っててね」 そう、今日と明日は久しぶりの連休。 私は溜まっていた家事をしたりしたいのに尚くんは手伝ってくれるけど遊びたいみたいで。 どこに行こうか何をしようかすごい考えてる。 もしかしてよく、主婦の人が言う、子供がふたりいるみたいって、こういうこと……? 尚くんと棲んで半年。 彼の生活スタイルが、ほぼわかってきた。 朝は、起きてすぐ布団の中で私のことを考える妄想の時間があって。隣に私本人がいるのに絶対に邪魔しちゃいけないということ。 朝ご飯は変わらずのローテーションに加えて、トマトを食べてみようの日が、水曜日。 朝の歯磨きは無言。 歯磨きしたあとに、ピンクの飴を舐める。 ものすごく、意味ない。 「梨世ちゃん、キスして」 「ふに」 尚くんのキスはどんな理由があろうと断ってはいけない、と思う。 なぜなら、前にニンニクを食べてしまったあとにキスしたくなくて、本当にごめんね、と断ったら部屋の端っこで幽霊みたいに暗くなってたから。 全く、不思議な人。
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