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「尚くんのバカっ」
「梨世ちゃん顔を半分浸けてぶくぶくしないの」
「……だって尚くんがいじめるんだもん」
どうしよう、梨世ちゃんが可愛すぎる。
頭にタオル乗っけてる。おもちゃみたい。
ちっちゃくてお人形さんみたい。
何してても可愛すぎて、一秒たりとも見逃したくない。
散々、彼女を弄んでしまった。
僕も我慢出来なくてふたりして……ふふ。
それでね、この山々の緑が綺麗な絶景の中で温泉に入ってる梨世ちゃんを撮ろうと思って、僕がカメラを用意すると彼女は不審そうにしてる。
「尚くん、まさか撮るの?」
「ダメ? 温泉ロケ」
「違うでしょっ!?」
――パシャっ
「こんなとこで撮るなぁ~~~!!」
「うわっ、梨世ちゃん、カメラにお湯かけないでっ、ちょっ」
退散せざるを得なくなった僕を見る梨世ちゃんは楽しそうに微笑んでいる。
彼女の幸せそうな顔を見ると、僕も幸せだよ。
カメラを置いて僕も梨世ちゃんの隣に寄り添うようにして入ると、温泉が傷に滲みる感じがした。
「尚くん大丈夫?」
「うん、大丈夫」
けどもうカサブタがあるわけでもない。
無意識の中で感覚が残っているだけ。
実際は滲みてないのに、不思議。
「尚くん、ふたりで入れば温泉も怖くないね」
「えっ……」
「尚くんの怖いものや、無意識のうちに遠ざけているものを徐々に克服してこう?」
「うん……ありがとう梨世ちゃん」
キミの誕生日なのに、僕が元気付けられちゃったじゃん……もう。
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