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「……僕ね、梨世ちゃんの願いは何でも叶えてあげたいよ」
「えっ?」
お風呂から出てゆっくりしてから、尚くんと浴衣で旅館の中を散歩する。
浴衣姿の尚くんは、少しはだけた胸元から鎖骨が見えてすごく色っぽい。
彼からは無限に色気の元でも出てるのかと思うくらい、心臓に悪いの。
それに加えて庭園の雪景色や、あちこちから上がる湯けむりが綺麗でうっとりしちゃうよ。
「私の、願い?」
「うん、美味しいものが食べたい、こんなとこに住みたい、あれが欲しいこれも欲しい……全部叶えてあげたい」
「えへへ……尚くん、何言うのかと思ったらそんなこと?」
「そんなこと? ってひどいな」
「欲しいものは……尚くんただひとりだよ」
「……ふふ」
「あ、もうひとつあった」
「何?」
「……尚くんが言ってた、家族のセカイ」
手を繋ぎながら尚くんの方を向くと、頬を赤らめてじっと私を見ていて。
うるうるしたガラス玉が私の瞳を捕らえると、彼は今にも泣きそうな顔をしている。
「また、泣いちゃうの?」
「だって……梨世ちゃんが嬉しいこと言うから」
「もう、泣き虫っ」
「……僕ね、木暮禅に……梨世ちゃんがいれば会ったりしても大丈夫な気がするよ」
「え?」
「梨世ちゃんがいれば、僕は無敵」
そういう尚くんの頬には、やっぱり一筋の涙が伝っていたよ。
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