3 僕の梨世ちゃんの誕生日だよ梨世ちゃん可愛い可愛い可愛……

25/28
前へ
/541ページ
次へ
「……僕ね、梨世ちゃんの願いは何でも叶えてあげたいよ」 「えっ?」 お風呂から出てゆっくりしてから、尚くんと浴衣で旅館の中を散歩する。 浴衣姿の尚くんは、少しはだけた胸元から鎖骨が見えてすごく色っぽい。 彼からは無限に色気の元でも出てるのかと思うくらい、心臓に悪いの。 それに加えて庭園の雪景色や、あちこちから上がる湯けむりが綺麗でうっとりしちゃうよ。 「私の、願い?」 「うん、美味しいものが食べたい、こんなとこに住みたい、あれが欲しいこれも欲しい……全部叶えてあげたい」 「えへへ……尚くん、何言うのかと思ったらそんなこと?」 「そんなこと? ってひどいな」 「欲しいものは……尚くんただひとりだよ」 「……ふふ」 「あ、もうひとつあった」 「何?」 「……尚くんが言ってた、家族のセカイ」 手を繋ぎながら尚くんの方を向くと、頬を赤らめてじっと私を見ていて。 うるうるしたガラス玉が私の瞳を捕らえると、彼は今にも泣きそうな顔をしている。 「また、泣いちゃうの?」 「だって……梨世ちゃんが嬉しいこと言うから」 「もう、泣き虫っ」 「……僕ね、木暮禅に……梨世ちゃんがいれば会ったりしても大丈夫な気がするよ」 「え?」 「梨世ちゃんがいれば、僕は無敵」 そういう尚くんの頬には、やっぱり一筋の涙が伝っていたよ。
/541ページ

最初のコメントを投稿しよう!

355人が本棚に入れています
本棚に追加