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「ふふふふ」
「……?」
アイロンが終わると尚くんはケータイを見ながら何やらニヤニヤしている。どうしたのかな。
「どうしたの?」
「……知りたい人は僕のほっぺにキスすること」
「……いいよ」
あまりにバカらしいラブラブっぷりに自分自身でも呆れちゃうくらいだけどね、好きすぎて。
キスをしてあげると、にこって笑顔になる彼が可愛くて可愛くて、どうしようもなく胸がきゅっと締め付けられるような感覚になってしまうの。
私も、相当重症で参ったなぁ。
「教えて?」
「あぁ、梨世ちゃん可愛い可愛い可愛い」
「……教えて?」
「世界の雑誌展に行こう」
「世界の雑誌展?」
「うん、今トレンドのファッション誌とか、グルメ情報誌が日本のだけじゃなくて海外のやつも展示されている展覧会なんだけど、すごく勉強になるよ」
「へぇ! 楽しそうだね」
そして、尚くんはものすごく真面目で熱心。
休日でも常にアンテナを張っていて、新しいことや流行りそうなことをいち早く吸収しようとする。
そんなところは、すごく尊敬するんだよ。
「じゃあ、準備しなくちゃね」
「あ、梨世ちゃん」
「ん?」
「…………」
尚くんが舌なめずりをしながら、じーっと私のことを見つめている。
これは怪しくて、しかもよろしくないことの、だいたい前兆なの。
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