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――――……
――……
「……瑛士?」
「どうしたんだ、春乃」
「こないだの話は、本当なの?」
「ん? あぁ……うちの学園の生徒に、木暮禅の彼女がいるって話か?」
「そう」
「粗方、本当だろう……俺も、生徒の個人情報には興味はないが今後の春乃の交遊関係に関わる可能性があるなら、気にしておく」
「……ふふっ、瑛士って素直じゃないわよね」
「何が言いたい」
「そんなさりげない優しさも、好きよ」
瑛士は少し、尚に似ている。
高校のときに両親が失踪したらしい瑛士は、それからずっとひとりでアルバイトとして今の学園に仕えて、そのまま就職して生活をしてきて、今の地位に辿り着いた。
だから、こんなに歳上なのに……なんだか放っておけないわ。
「私の過去も、入院してたことも……尚のことも受け入れてくれるって瑛士が言ってくれたときは本当に嬉しかったわ」
「……じゃなきゃ男が廃るだろう」
「ありがとうね、瑛士」
私だって、両親はとうの昔にいなかった。
おばあちゃんに育てられたから。
なんかね、それだけ人の痛みがわかる人は連れ添う人たちも似通っているのね。
私の周りには優しさの塊みたいな人しかいないわ。
ぽーっとしている感じなのに、大きな優しさの中に強さがある梨世さんには……女として敵わないって思ったけどね。
「そろそろ、寝ようか」
「いいの? 帰らなくて」
「今日は相棒に任せてあるから、大丈夫」
「橘さんのことね」
私も、少しずつ知っていきたいわ。
病院にいた3年間のこと。
そして、瑛士のこと。
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