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「す、すみませんビックリしちゃって・・あの、は、初めまして。西奴です」
私の疑問を打ち破るように、西奴さんは後ずさりをし、どうぞと手招く。
こんなに若く見えて私より3つも上かあ。
ていうか今次さんよりも上・・まああの人は別の意味で思春期満喫してるか・・
頭の中を巡る衝撃を悟られないよう笑顔を見せ、お邪魔しますと玄関に足を踏み入れる。
廊下からリビングらしき方向には既にいくつものドアがある。
一人暮らしだとしたら相当広く使えるだろうな。
人様の家を勝手に値踏みするのは申し訳ないけど、前を行く幼い背中とはどうしても似つかずそっと辺りを見回してしまう。
「最初にご挨拶も無く窺って申し訳ありません、急な代理だったもので・・」
「ええっ、ぜ、全然・・あの、今次さんどうかしたんですか?梶浦さんが、体調不良って」
ええ、いろんな意味で生死の世界を彷徨ってます。
「ちょっと疲労がたまってたみたいで。すぐ良くなると思うので大丈夫ですよ」
「なら良かった・・あっ、どうぞ座ってくださいっ」
リビングに入ると、西奴さんはジェスチャーのようにひとつひとつに身振り手振りを加えて私を促す。
差し出されたクッションを有難く受け取ってテーブルの前に座ると、西奴さんも向かい側に腰を下ろし、かと思うと「あっ、原稿ですよねっ」と立ち上がった。
緊張してるんだろうけど、その中にも人柄が滲んでいる。
なんだか可愛い人だなあと、こっそり笑いが出てしまった。
それにしても、改めて見ても本当に若い。
着飾った若さじゃなく、ありのままのあどけなさ。
これであの小説を書いてるなんてにわかには信じがたかった。
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