epi.7

14/17
前へ
/17ページ
次へ
私としては、女性を立てる控えめな思考に感心して訪ねたつもりだったのに、もしかして「ドMなんですか」と聞いてるようなもんだった? 「僕はあんな、大企業に新卒入社なんてとてもとても・・まず度胸がないし、年上の彼女なんて夢のまた夢です」 「そ、そうですか」 「人見知りだし・・あんまり外も出ないし・・唯一話すのは今次さんか梶浦さんくらいで」 しまった、変な方向へ進ませちゃったみたい。 ずーんと重い影を背負いだす西奴さんがより小さくなり、慌てて話題を変える。 「私も最初から読ませて頂いたんですけど、とても素敵な話ですよね。SMのことはまだ勉強不足なんですが、それを抜きにしてもお互いのもどかしい感じに感情移入して、続きが気になります」 かといって、今次さんのように図々しくこの場で読みふけりはしないけど。 「2人が幸せになったらいいなって。一読者として望んじゃいますね」 「・・ありがとうございます。なんか、小見さんみたいな感想って新鮮で、照れくさいな」 いやあ、と髪を見出してはにかむ姿は、純愛小説を書いている純朴な青年そのもの。 「ふふ、でも毎回すごい数の感想来てますでしょう」 「それは有難いんですが・・・大体はプレイ内容についてのリクエストで」 うーん、やっぱり本人か。 影武者説も取っておきたかったけど、そろそろ現実を認めなきゃいけないな。 二個目のケーキを食べつつ、西奴さん宛てに届いていたメールのタイトルが『蝋燭って』『今回の緊縛シーン』塗れだったことを思い出す。 読者だって西奴さんを見たらきっとビックリして、ゴーストライター説でも湧き上がるんじゃないだろうか。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

416人が本棚に入れています
本棚に追加