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唇についたクリームを気にして舐めとる姿にまたも癒されていると、西奴さんがチラッと視線を寄こした。
「あ、あのお。実は、ちょっと前に今次さんから、新しく女性のライターさんが来たって聞いてまして・・」
「え?」
「ゆきんことシェアしよ☆のコーナーって」
立場逆転。
今度は私が目を逸らし、這いつくばる勢いで逃げたい気持ちにかられる。
「え、ええ、まあ。やらされた仕事で知識不足で全然物足りないと思うんですけど」
「そんなことないですよ!」
がばっと身を乗り出してきた西奴さんに、言い訳を並べようとしていた口が止まった。
「小見さんみたいに綺麗な人が、赤裸々に書いてるのってすごく励みになると思います」
「は・・げみ?」
「誰でもこういう欲求もを持ってて当たり前だって。卑下しなくていいって、書いてくれたじゃないですか。僕も作品の内容がこんなだから、普通だったらドン引きですよね・・でも、文章にすると、同じような心を持ってる人がたくさんいるってことがわかる。
安心にもつながるかなって」
小さな声だけど、しっかりと意見を言う西奴さんに、タイチさんの言葉を思い出した。
欲求を持つのは悪い事じゃない。
そりゃ犯罪めいたことは駄目だけど、心の中にしまいこんでいた秘密を共有できれば人は安心するものだ。
私の出した答えもそこに繋いでいけるんだろうか・・
いや、繋いでいく、それこそが私の役目なんだろう。
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