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女王様のペディキュアは僕の舌。
初めてこのタイトルを目にした時の衝撃は未だに忘れられない。
これだけでも常人には到底理解できそうにないと引いてしまうのに、巷では1,2を争う(もちろんアダルト部門でだけど)作品だという。
自分の趣向とはかけ離れてると言え、アンダーハートの看板連載である以上目を通さないわけにいかない。
きっと右から左になるだろうなと思いつつ、第一話から触れてみることにしたのはついこの間のこと。
容姿も成績も生き方も全て平凡の男が、年上の女性チーフに恋をした。
自分のような冴えない男を受け入れ、愛情を注いでくれる彼女。
しかし初めての夜、彼女は本性を現す。
彼女は自分を男として愛していたのではない、玩具として犬として跪かせていたいのだ。
男としての愛し方を否定され良いように弄ばれる主人公だったが、やがて自分でも気づくことのなかった、マゾヒストという性癖に目覚めていく。
離れられないのは洗脳されているからなのか?
また、葛藤を抱えているのは当の女王も同じだった――
持ち帰ったバックナンバーを全て読み切った時、外では鳥が鳴いていた。
これは物語として十分に面白い。
飛び交うアブノーマルな単語や道具や描写を抜きにして、心理描写を重視すれば、立派な純愛物語だ。
お互いに人として相手を愛したいのに与えられた立場が邪魔をする、その葛藤と揺れる気持ちの書き方がとてもうまく、読み手を引きつける。
惜しむらくは、いつもいつも気持ちを吐露する場面で鞭を持っていたり蝋まみれだったり四つん這いで爪先を舐めてることだ。
これがスマホ片手とか電車の中とか屋上なら、今年のベストセラーになること間違いなしなのに。
『心をがんじがらめに緊縛されました』
『蝋が剥がれ落ちる度に本当の気持ちが現れる』
なんて帯、本屋のど真ん中に置けるわけがない。
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