epi.7

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コンビニで買うのもどうかって感じだけど、一人暮らしなら大きな菓子折りもってっても余っちゃいそうだし、無難なところでコーヒーと甘いものにしよう。 チーズは好き嫌いがありそうだから・・あ、定番のイチゴ。 ちょうど最後の一つみたいだし、これでいいか・・ ごく一般的で味も保障されているショートケーキを見つけ、手を伸ばす。 お世辞にも大きいとは言えないサイズが二切れ、仮に甘いものが得意でない男性だったとしてもこれぐらいなら受け取ってくれるだろう。 良いものが見つかったと頷いたその時、視界に別の手が入り込んだ。 私じゃないそれが、あっという間にケーキの箱を掴み、去って行く。 「あ」 あまりのタイミングに思わず声が出てしまった。 すると、今にも視界から消えそうだった箱の端がピタッと止まり、すぐ横で「えっ?」という呟きが聞こえる。 「あ・・、これ買おうとしてました?」 その声につられるように顔をあげれば、そこには苦笑と戸惑いが入り混じった表情で佇む若い男の人がいた。 長めの前髪から窺う瞳が困ったように揺れ、慌てて首を振る。 その時にはもう、私の持つ籠の中に箱が入れられていた。 「えっ、そんな、良いですよ!」 「いいえ、僕違うのにするんで大丈夫です、どうぞ」 今度は私が戸惑い、譲られてケーキを返そうと手に取る。 だけど彼は素早く隣にあったチーズケーキを取り、ぺこっと頭を下げたかと思うと足早にレジに向かってしまった。 咄嗟にかけたお礼も届いたかどうか。
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