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な、なんか怯えにも似た去り方なんだけど、私そんなに怖い顔してた?
「あ」が、「あぁ?」に聞こえたんだろうか。
ひとまず自分も会計を済ませ、まだ間に合えばもう一度お礼をと思ったけど、ドアの向こうにはもう彼の姿はなかった。
パーカーにジャージだったし、近所の大学生かな。
課題の途中で息抜きに甘いもの?それとも彼女が来るから用意したとか。
見ず知らずの人のことを想像しても仕方ない、けど優しい心遣いに、彼にいいことがありますようにと願いながら先に向かう。
コンビニを出て歩道橋を渡り、目の前にそびえるマンションが西奴さんの家。
なかなかの高層マンションだし、駅にもコンビニも近く立地条件も最適。
若いと言えど、売れっ子作家は違う・・
昨日から自分を卑下してるな、私。
メモしておいた部屋番号をもう一度確認してエレベータに乗り込む。
約束の時間より少し早いけど、梶浦さんが連絡してくれてるみたいだしこのまま訪ねても平気かな。
『あの偏屈作家、時間ピッタリじゃないと居留守使うんだよね』と嘆いていた知り合いを思い出し、ちょっと緊張しながらチャイムを鳴らす。
すると数秒もしないうちにガチャっと電話を外す音が響き、
『は、はいっ・・』
それはそれは小さく、語尾の上ずった声が聞こえた。
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