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梅野と書かれた表札の家には、今日も黒猫が勢い良く飛び出す。
口には白い財布を咥えて、けたたましく駆け出し、尾を一振りして行った。
「あら、くろちゃん今日もおつかい?偉いねぇ」
八百屋のおばちゃんだ。良く私に”おまけ”をくれる。
財布を地面に置き、にゃあ、と愛想良く一声鳴く。
おばちゃんは財布を手に取り、中に入ってるメモを確認する。
「にんじんとじゃがいもね。ちょっと待っときな」
よしよしと頭を撫でて、店の奥に入って行った。
蝉の声が嫌でも耳に入る猛暑。
夏を実感させるその声に鬱陶しそうに尻尾をゆらりと揺らした。
「はい、くろちゃん。にんじんとじゃがいも。あとおまけね。財布は袋の中に入れといておいたから。」
にゃあ、と一声鳴くと、レジ袋を口に咥え、おじぎをして八百屋さんを離れた。
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