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ラブレターの秘密
文化祭が終わり、高校には一時的な静けさが戻っていた。
この後には期末テストという二学期最後のビッグイベントが待っている。人によっては死の宣告に等しいそのイベントが、校内に喜怒哀楽入り混じった嵐を巻き起こす事はすでに約束されていた。
そんな嵐を前に、例え僅かでも穏やかな日々を貪りたい。
高校全体がそう願っているかのごとく、毎日が平穏だった。
高月晴樹は、現在二年生。
歴史も名誉もさっぱり無い図書委員会にて長を務めている。
中肉中背。頭脳、運動神経は共に並。文化祭を人並みに満喫し、来る期末テストにそれなりの恐れを感じる平凡な男子である。
彼は今、図書委員用の事務室で昼食を食べていた。
図書委員会の長に任命されたものは、昼休みに貸し出し係を担当する役目を負わねばならないのが伝統だった。
いつ利用者が来ても良いように、昼食も貸し出しカウンター奥にある事務室で食べなくてはならない。お陰で図書委員長職は貧乏くじと称され、敬遠されるのが常だった。
これを晴樹は二つ返事で引き受けた事で、図書委員会内では変わり者呼ばわりされている。
そもそも晴樹は委員会に入った当初から昼食を図書室で食べていた。つまり、別段今までと生活が変わるわけではなかったのだ。もちろん引き受けた理由はそれだけでは無い。だが、そんな事も二つ返事で引き受けた理由のうちにはちゃんと入っていた。
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