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移動教室が終わって戻ってきた晴樹は、机の中に手を突っ込んだ姿勢で動きを止めた。
指先に当たったそれを、ゆっくりと引っ張り出してみる。
死んでいた晴樹の目には、たちまち光が戻った。
「ぬぁっ……!?」
慌ててそれを胸ポケットに押し込め、勢いよく立ち上がる。
数日間、半死人のように緩慢な動きしか見せていなかった晴樹が、突然奇声を上げ、機敏な動きを見せたものだからクラス中の視線が一気に集まった。
そんなクラスメイト達に愛想笑いを返し、高鳴る鼓動を押さえんと深呼吸を繰り返す。
何気ない風を装いつつ、椅子やら机やらに躓きまくりながら速足で教室を出る。
その姿を見送ったクラスメイト達は、いよいよ壊れたのではないかと騒めいた。
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