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そんな事とは露知らず、速足のままでトイレに入った彼は、目撃者にもかまわず個室へと飛び込んだ。
胸ポケットからそれを取り出し、まじまじと眺めながら、小さく晴樹は呟いた。
「何が小説書いてるの、だよ」
すっかり騙されていた。
だが、心の中の晴樹は小躍りして喜んでいる。
ありふれた白い横長の封筒。
手触りで分かる空っぽの中身。
しっかり糊付けされた封の真ん中には赤いハートのシール。
差出人は不明。
表替えしてみれば、封筒の真ん中に「高槻晴樹様」と手書きの宛名。
その文字は、力強さを感じさせる独特の金釘文字で書かれていた。
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