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だが、晴樹にとってカウンター奥の事務室は天国のような場所だった。
第一に、落ち着いて昼食を食べられる。
いつ来ても良いようにと言っても、昼休みの頭から図書室に駆け込んでくる生徒はまずいない。昼休みに入ったら、誰もがまず昼食を食べるものだ。
第二に、図書委員が使うことを許されたポットと冷蔵庫がある。
学校内で許された範囲のうちであれば、なんと自由に使う事ができる。
ただ、ポットに関しては以下の二点を必ず守る様にと定められていた。
まず、ポットは必ず定位置であるキャビネットの上に置く事。
そして、利用者はその背後の壁に掛けれた戒めを必読の事。
戒めは墨字で半紙に書かれ、御大層な額に納められていた。
そこに書かれた文言は「匂いの強いもの禁止!!!」という一言。
わざわざ三つ並べられたエクスクラメーションマーク。
墨と筆と言う筆記具が漂わせる物々しさ。
そして、筆者独特の金釘文字が感じさせる力強さ。
それらが相まって、見る者を威圧するようなオーラを放っていた。
筆者は先代の図書委員長に他ならない。
彼女が自戒と反省の意味を込めて、書道部の備品を借りて自ら書いたものを自腹で買った額に納めて掛けてあるのだ。
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