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「ちょ待てよ~ってね、切れちった」
結局まともな会話は一度も出来ないままに電話は切れた。
香織は携帯を閉じると首を傾げる。
「…よくもまぁ…躊躇いもなく他人の電話に出られたねぇ…」
「だってー、本人だったかもしれないしー」
「思い切り依頼人って書いてあったじゃん」
それより何て?と優華が尋ね香織は首をさらに捻った。
「なんかぁ、アタッシュケースを探して欲しいんだってさ」
「アタッシュケース?」
「そ、真っ黒なアタッシュケースで大切なものが入ってるから見つけても開けないでくれって」
「……………金か」
「スパイだしねぇ~」
2人は鳴らなくなった携帯電話を見つめ納得したように頷いた。
通りには人は居ないが、携帯電話に向かって頷く女子高生2人、これほど奇妙で滑稽な光景は無いだろう。
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