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千春がそこまで言った時だった。
声をあげて泣き出した。
泣き出したのは……
マナだった。
「エリがまだ話さないの、1言も。
音がすれば反応するのに。
でも私は分かるの。
エリが思ってる事も、欲している物も……」
千春はそっとマナを抱き締めて言った。
「それでも羨ましいよ。
私、向こうに行ってから1度も生理がきてないの。
もう産めないかも」
マナは顔を上げて千春を見た。
「私ね、最初エリちゃんを見れなかったわ。
何故か分からなかった。
変でしょう。
ずっと現地の子の写真を撮っているのに……
エリちゃんも可愛いと思っているのに……
その理由があの小説の失恋した綺麗な男の子の気持ちで分かったの。
身近な人の幸せな様子を見て抱く嫉妬のような負の感情のせいだって。
でもね、その感情を肯定してくれる人がいたの。
その男の子に向けて言ったのに、私にも“辛かったわね”って慰めてくれた気がしたの。
その人が裏の主役よ」
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