思い出

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久しぶりに開いた写真のアルバムには、幼い頃の私が写っていた。泥まみれで楽しそうにわらう私。大怪我になって手に包帯を巻いたまま海にはいる私。そして、片想いの彼と手を繋いでいた私。 全てはまだこの気持ちに気づいていないときの私だ。 ページをめくる手を止めた。そのページには私のいない写真が1枚だけあった。マラソンを走る彼の写真だ。写真屋のおじちゃんが撮ってくれた写真。お金を払って選んだ写真を買う形式で、恋心芽生えた私が間違いを装って買った一枚。 今思うとお母さんにはバレバレだったんじゃないかな。だって彼しか写っていないんだもん。アイドルのスナップ写真気分だったかもしれないが、今の私には大ダメージだ。何だか恥ずかしくなってきた。手で扇ぎながらアルバムに手を伸ばす。 成長の止まった私と老いを感じはじめる母の写真。このページをみると私がどれだけ成長したか一目瞭然だ。下の方には母の字がかかれており 「娘に抜かれる母」 なんて書いてあるからにやにやしながらページをめくる。 私が妊娠した頃の写真があった。どの写真も泣きそうな顔したあとに、満面の笑みでポーズを決める私がいた。母にだけ見せられる顔をこう写真にされると困るんだけど!そう思ったけど懐かしさと嬉しさを感じた。 『ママー!』 ドタドタと走る音がよってきた。扉を開けようと背伸びをする娘の姿がすりガラス越しに写っていた。 ガチャっと音がなると娘が私の脚に飛び付いた。机があるからやめなさいっていっても聞かないもんだから、机の脚にカラフルにフェルトが張られている。もちろん全部の脚につけてあります。 『ママ!ただいまぁ!』 「おかえりー!」 娘を抱き抱えて膝に座らせる。 「ただいま」 そういって扉を締める彼。ふと、幼い頃の私の写真を思い出してほほが緩んだ。にやぁってわらう私をみて不思議そうに「なに?」と聞いてくる。 なんでもないよー?と言わんばかりににんまり笑って首をかしげる。 「おかえり!」 そう言ってアルバムを閉じた。
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