消失と誕生

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そろそろ頃合いだろう。 そう思ったのか子供達が寝静まった後、伸介さんはアプローチを仕掛けて来た。 「ごめんなさい、今日はそういう気分じゃないの。」 「ううん、大丈夫。疲れてるのにこっちこそごめん。」 そう言って彼は私に背を向ける形で眠りについた。 翌日、伸介さん、優芽を見送った後、家族に私が不自然だと悟られぬよう、ある行動に出た。 家の中を探索。 そして、写真やアルバムなどを見てその当時の記憶を呼び起こす。 もちろん、彼らと過ごして来た記憶は無くなってはいないのだけれど、要所要所で人には特徴が出るものだ。 例えば、座り方一つとってもそう。 私は普段座布団などでは正座、伸介さんはあぐらといった具合に。 さて、やりますかと思った矢先、軽快な音で洗濯終わりましたよの合図が洗濯機から聞こえて来た。 洗濯物を干し終えた私は、十がぐずって来たのでおしめを替え、お乳をあげた。 利津は大人しく絵本を読んでいるので、今がチャンスだ。 十が泣いたら呼んでね、そう利津に言うと伝わっているのか少し怪しい間の末、利津は笑顔で承諾してくれた。 まず私は主婦の本分である家事を終わらせる事にした。 部屋の掃除に、トイレとお風呂の掃除、エトセトラ。 主婦というのは世間の夫からすると家でゴロゴロしているというイメージが強いかもしれないけれど、そんな事はないのだ。 これはこれで、立派な仕事と言ってもいい。 優芽は小学校に行っているから良いけれど、他に子供が2人がいるなら尚更多忙というものだ。 午前中に家事を済ませ、利津と十にご飯を食べさせた後、計画を遂行しよう目論んでいたので、家事を猛ダッシュで終わらせた。 そして午後1時。 私はママ会とやらに興味がないので、お昼を食べ終えた後は大抵家事をしているか、今朝の如き早技で家事を済ませゴロゴロしている。 利津が生まれてからというもの、主婦のゴロゴロタイムはめっきり減ってしまったけれど。 見事ミッション遂行の時間を獲得した私は、寝室へと向かった。 私の宝箱。 伸介さんに貰ったプレゼントや手紙、写真などが入っている。 開いた直後、思う。 なんでこんな重要な事を忘れてしまっていたのだろう。 宝箱を開けると、一番上に置いてあったそれは、某キャバクラのマッチだった。
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