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白い手紙を貰ったあの頃とはこの卒業アルバムに載っている学生の頃の話です。
その女性と直接初めて会ったのは入学式から五日後でした。私がお手洗いに向かおうと教室の扉を開けようとした時でした。その扉の廊下側に彼女は教室の扉を開けようとしていましたが、私が先に開けてしまったのでそれが出来ませんでした。
「ごめんなさい」とその女性は言いました。
「こちらこそすまん」と私は彼女に言い返しました。私はそれまで彼女のことを知りませんでした。そしてそれが一目惚れでした。
それからしばらくした時でした。彼女はなぜか私によく声をかけてきました。例えば「昨日、私の前歩いてたね?」とか「あの店にいたよね?」とか。そんな他愛の話でした。
二年生の頃に彼女から初めて手紙を貰いました。それは玄関口で桜の花びらが散る時期でした。下校時に下駄箱を見てみると、例の白い手紙が封筒と共に入っていたのです。心臓が風船であるヨーヨーを遊んでいる際に動き回る水のように興奮していました。しかしその手紙を受け取って喜んでいた私は家でそれを読んで涙を流しました。
『あなたのことが好きです。でも命が持ちません。なので私を忘れてください。さよなら』
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