序章・ある少年の自問自答

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「少なくとも、俺が通っている学校には一人も居なかった」 「そして、お前のクズさはどうやったところで拭いようがないものだ。これが問題だな。じゃあ話は簡単だ。そのクズさを隠す術を身に付ければいい」 「そんなことが出来ると思うか?」 「無理だろうな。入学初日、隣の席の奴の膝を花瓶で殴り潰したようなお前だ。知っているか? あいつ、その怪我で二度とサッカーできなくなったんだぜ? まああいつ野球部だったけど。とにかく、自制心ってもんが皆無なのかてめぇは。なんであんなことしたんだよ」 「知らん。そんなどうでもいいこと覚えていられるか。過去の俺に聞けよ」 「だったらタイムマシンでも発明してくれ」 「はっ、荒唐無稽なことをいいやがる」 「ただの冗句だろ。なに本気になってんだ。とにかくだ。お前のクズさは折り紙つきで、しかもそれを隠すほどの忍耐もないと来た。その上でお前は人と関わりたがる寂しがりやだ。最悪な組み合わせだな。笑える」 「なんだと」 「最悪だと言ったんだ。そんなお前が、友達が欲しいだのなんだのと言う資格はない。それくらい、自分でも解っているだろ?」 「……まあな」 「それじゃあ、話は簡単だ」 「はぁ?」 「お前と同等のクズを探せば良いのさ」 「……あっはっは、なるほど、お前、さては天才だな?」 「やめろよ、自画自賛が過ぎるぜ」 「だが問題は、そんなクズどもが存在しているのか、って話だな」 「おいおい、自惚れるなよ? 世界は広いんだぜ。お前のクズさなんざ、序列にしてみりゃ下の下だろ。きっとな」 「でもさ、見る限り、俺の世界に、俺のようなクズはいなかったぜ」 「あいつらは巧妙に隠れているんだ。探し出せよ」 「探し出す」 「探し出して――」 「探し出して?」 「友達になればいい」 「なれるかな」 「なれるさ。大抵のクズってのは良い奴ばかりだからな。俺が言うんだから間違いない」 「ははっ、なるほど、そいつは確かに間違いないな。笑える」 「結論は出たな。もう用は済んだか?」 「ああ、済んだ」 「じゃあ、またな」 「ああ、じゃあ、また」 そして少年は鏡を割った。
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