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銃弾の購入がままならない序盤こそ、アイスピック一本で人殺し(本人的にはただのTP、通貨、AP集め)に勤しんでいたサザンカだが、最近はもっぱら拳銃を使うことが多かった。ちなみに、未だにFA-MASの出番は来ていない。
「どうすっかなぁ……」
弾倉の入ったままの拳銃を振り回しながら(引き金に指が掛かっている。安全装置はかかっていない。危ない)、サザンカは嘆く。
彼はギルドにも所属していない(その性格や行動を考えたら当然だが)――そもそもモラル値が異様に低いため、加入すること自体が出来ない。そのため、人と関わる機会が酷く少ない状態だ。
――このままでは、友達が出来ない。
それは、このゲームに参加する以前から、サザンカが抱えていた悩みでもあった。
友達は欲しいが、どうすれば出来るのかが解らない。そもそもなぜ友達が出来ないのか、その原因すらサザンカには解っていなかった(傍から見れば一目瞭然ではあるが)
考える。
考えても解らない。
友達を作る方法――しかも、今のサザンカの状態は、橙色の瞳を持つ悪性プレイヤーである。
考え、考え、考え続けて――
やがて、サザンカは鏡に手を伸ばす。
そして、自問自答の時間が、始まった。
× ×
「俺と同等のクズを探そう」
深夜。
太陽はとっくに沈み、月は雲に隠れ、星の光は弱々しく、僅かに届くだけ――そんな夜の世界に足を踏み出しながら、サザンカは呟いた。
その腰にはP9とアイスピックが備え付けられているが、別段戦闘や人殺しに赴くつもりはなかった。かと言って護身用と言うわけでもなく、ごく自然に、いうなれば帽子をかぶって外出するのと似たような感覚で、彼は凶器を持って外出する。
それはもはや癖とさえ呼ぶべき性質である。
本質に根付いた感覚。
「要するに、あれだ。俺に友達が出来ないのは、周りが俺の性格の悪さについてこれないからだ。だったら、俺と同じくらい性格の悪い奴を探せばいいに違いない」
外に出たサザンカは、ぶつぶつと独り言を呟く。傍から見れば恐ろしく怪しい奴だったが、実のところ独り言を呟かなくても怪しい奴であることには違いないので、さしたる問題ではないとも言えた。
なんにせよ、幸いにして、深夜の街には人が少ない。
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