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彼のオレンジ色の瞳も、宵闇に紛れて見えにくくなっており、万が一誰かに見つかってもそうそう、彼が『橙色』であることは露見しないだろう。
露見したところで、殺せばいいだけなのだが。
まあ。
露見しなくても殺すけれど。
彼が深夜に出てきた理由は、『悪いことするなら夜』と言うイメージがあるからである。
つまり逆説的に、『夜は悪いことしている奴が多い』と言うことになり、お世辞にも善良とは言えない彼の性格と、似通った人物が徘徊している確率が高い。
特に――第九区。
中央都市の中でも、屈指の悪治安を誇る地域。
「……確か、橙色が目撃されてんのも、第九区だった……よな」
スマートフォンを開き、ネットワークにアクセスするサザンカ。その中の情報掲示板を開き、情報をチェックする。
第九区の、橙色。
被害者の情報によれば、その人物は少女だと言う。外見的特徴としては、長い髪と言う事以外は何も明らかになっていないが、それは単純に、『眼がオレンジ』と言う何よりも解りやすい特徴がある故なのだろう。それがあれば、他の外見的情報の重要度は比較的落ちる。
人殺しの特徴は様々で、斬殺されたと言うものもいれば、圧殺されたと言うものもおり、射殺されたと言うものは山ほどいる。
あらゆる武器を使えると言うことらしい。
「……まあ、そう言うやつもいるか」
噂によれば。
一瞬で武器を持ち替えるため、とにかく対応がし辛いのだとか。
一つの武器カテゴリを極めるのも、かなり有力な強さへの道ではあるが――この橙色のように、あらゆる武器を使えると言うのも、大きな強みだ。
よく使う武器として挙げられているのが、大鎌――機関銃――双刀――大斧――そして対物ライフル。
「……とりあえず、この五つのうちのどれかを持っている奴がいたら、気をつければいいんだな」
ざっくりとした理解を示して、サザンカは歩きだす。
目的地は、言うまでもなく、第九区。第一目標は、この噂の橙色の少女を探すことであるが、別にそれだけには留まらない。
彼女以外にも、自身と張り合えるような性格の悪い人物を探し出せるのならば。
それはそれで、構わないのだから。
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