友達作り

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とは言え――サザンカの中には、一つの予感があった。 今日、この夜――その橙色の少女に遭えると言う予感が。 それは、彼が持つ、生来の〝運の良さ(リアルラック)〟が関係しているのだが―― 「――ははっ、つってもこれは早すぎんだろ。笑える」 自身へと大鎌を突きつける少女を目の前にして、サザンカは笑みを浮かべた。 「……はぁ? 何が笑える、よ。あんた、今の状況解ってんの?」 長い髪の少女だった。 低めの身長。それにそぐわない長柄の得物――そして、左手にはサブマシンガンを持っている。腰にはいくつかの予備の弾倉が括り付けられていて、戦闘準備万端であることを示していた。 そして。 その眼―― その眼が。 「――ねぇ、見えている? 私の、この眼? 解る? この意味?」 ――橙色に。 「あっはっはっは。超笑える」 「いや、笑うところじゃないんだけれど」 口角を吊り上げるサザンカに対して、少女は引いたような表情を浮かべた。 まあ、確かに、橙色の瞳を持つものに、大鎌を突きつけられて笑い出すような輩は引かれて然るべきだろう。 (――すげぇな。第九区に入ったばかりだってのに――もう目当ての相手と遭遇か。昔っから運は良かったけれど――ああ、『幸運補正』の分が働いてんのか) 笑みを崩さないままに、サザンカは思考する。 ステータス割り振りにおいて、攻撃力よりも、防御力よりも、サザンカは幸運を軸にした。それは、彼の今までの人生において、幾度も『偶然』によって助けられてきた過去がある故だった。 「……なに、笑ってんのよ。不愉快ね。と言うか、人と話す時くらい、こっち見なさいよ」 少女は、苛立ったようにそう言う。 「あんた、今の状況解ってんの?」 「え? ああ、うん、まあ」 相も変わらず、少女へと視線を向けないままに、サザンカはそう言った。彼の視線は、ここまでずっと、左上の方を向いている。それに対して、少女は苛ついたように「ちっ」と舌打ちを零し、言葉を紡ぐ。 「――だったら『そういう風に』振る舞いなさいよ!! 怯えろ!! 泣け!! 命を乞え!!」 「え? なんで?」 「――なっ、なんでって」
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