友達作り

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それは、楽ではあっても、楽しくはない。 あんまり、楽しくない。 全然楽しくないわけでは――まあ、ないけれど。 ――私が好きなのは、人殺しじゃない。 追う少女の手には、クロスボウガンが握られている。奇妙な、赤い血管のようなものが浮いている、不気味なクロスボウである。 弾丸が当たらない――ならば矢なら、と言う判断だった。銃と違って、クロスボウであれば、発砲音がしない。 背後を見もしない対象が、攻撃をなんらかの方法で避けているのだとしたら、それは発砲音を契機にしているはず。 それならば――音のないクロスボウで、殺す。 撃つ。 撃ち殺す。 「――っ」 しかし、またもやボルトは見当違いの方向へ飛んでいく。 (――違う) 少女は思考する。 (避けているわけじゃない……私だ。私が、外しているんだ) ――なぜ。 あらゆる武器を自分の手足のように使いこなすことの出来るユニーク・スキル――『四肢類々』を所持している彼女にとって、銃撃もボウガンも扱い慣れたものであり、外すなどと言うことはありえない。 (どうして) とにかく――あの少年には、一切の遠距離攻撃が当たらないと、そう思ったほうがいい。そう言うパッシブスキルを持っているのかもしれない。 なら。 「Convert」 瞬間、少女の両手には双刀が握られていた。白金の刀身に、またもや、血管のようなものが浮き出ている。 瞬間、少女の身体は爆発的に加速する。一瞬で空いていた距離が殺され―― 「――!!」 予感。 パッシブルスキル、『死の直感』が、このタイミングで発動したのを自覚し、少女はとっさに左側へと飛び退いた。 刹那、それまで彼女の頭部があった場所を、銃弾が貫く。 (――全く後ろを見ずに、正確に頭部に、銃弾を。どうやって?) 考え。 少女の口元が緩む。 ――ああ。 ――楽しい。 今、あの瞬間。自身が死にかけたと言う事実。一秒でも回避が遅れていたら、脳が弾けていたと言う事実。 感覚。 命のやり取り。 命がけの、戦い。 少女の目が、見開かれ、口元が歪む。 (――止まらない、高鳴り)
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