友達作り

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踏み込む。 ただでさえ高い身体能力に、双刀のステータス補正によって爆発的に向上したスピード。またもや距離は一瞬で消える。 双刀のリーチの範囲内に、少年の首が入った瞬間、彼女は刃を振り抜いた。 (――殺した) はずだった。 経験上、あの速度で、あの状態で、こちらを見てすら居ない少年が、あの斬撃を躱すことなんて不可能であることは明白だった。 だからこその、確信。 首を落としたと思った。 しかし―― 「――なっ」 足払い。 (――どうして) いつ、しゃがんだのかも解らなかった。まるで、そう、『殺した』と確信した、その油断の……一瞬の、意識の空白を突かれたかのように。 殺したと思った少年から繰り出された足払いを、少女は躱すことが出来なかった。一撃必殺の攻撃でない以上、スキル『死の直感』は発動せず、くるりと天地がひっくり返る。 「――――」 仰向けに倒れた少女の首元へ、何かが振ってくる。理解よりも早く反射神経が働いた。とっさに左手の刃を放りなげ、開いた左手を眼前に突き出す。 じくりと細い痛み――何かが刺さったと自覚したその瞬間、吹き出す血液。血管が破れ、中の液体が濁濁と溢れる。 彼女の手に刺さっていたのは、アイスピックだった。 死への一撃を辛うじて防いだと理解したその瞬間、少女の右手は殆ど自動的に、人を殺すために動き出す。 それはもはや無意識の行動。そこには根底に根付いた殺意がある。 右手の刃を、自身の上にいる少年の脇腹に突き刺す。こぼれる血液が少女の服を濡らした。 「うぇ」 少年がうめいた。だが、その表情には苦しみの色はない。 むしろ。 そう。 ――笑っている。 「――はは」 だから。 「あはははははははははははははははっ!!!」 少女も笑った。 楽しいから。 面白いから。 笑いながら、少年の力が緩んだその隙に、彼のみぞおちを蹴り飛ばす。武器によって強化された肉体から繰り出されるその蹴りは、防御にステータスを全く振っていない少年の内臓を破壊するに十分な威力を持っていた。 弾き飛ばされた少年は、ごろごろと転がってから立ち上がる。少女も、同じように立ち上がる。 相対する、二人の橙色。
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