友達作り

13/14
87人が本棚に入れています
本棚に追加
/177ページ
「ははっ」 痛みに一瞬気を取られた間に、アイスピックが振るわれる。狙われているのは心臓部。ギリギリで身体を捻り、直撃を避ける。刃が肋骨に当たり、止まる。 内臓器官はそれで守れたが、それ以上に痛みが酷い。刃先が骨を削る形容し難い感覚に、脳髄に液体窒素を流し込まれたような感覚に襲われる。 思わず距離を取る。 「……ねぇ、なんで、攻撃、当たらない、の」 少女は、言った。 ――本当に珍しい、と思う。 こんな、命がけの戦闘中に、呑気にお喋りするなんて。 殺すだけの敵に、話しかけるなんて。 そんなこと――これまで、一度も、なかったのに。 少女の言葉に、少年は―― ――何も言わずに、拳銃の引き金を引いた。 「――!!」 紙一重で、その銃弾は躱せたが、それは別の傷が、少女にダメージを与えていた。 (……む、無視された) ――が、頑張って話しかけたのに。 少女の目に、微かな涙が浮かぶ。 残念なことに、それほどメンタルは強くないようだった。 「――っ、Convert」 涙を拭い、気持ちを切り替えるついでに、武器も切り替える。大鎌の代わりに現れたのは、二丁のP90。軽量かつコンパクトでありながら50発と言う弾丸を内包する個人防衛火器。 50×2。占めて100発。 (当たらないなら、数撃ちゃ当たる) 凄まじい発砲音の連続と共に、暗闇に火花が散る。少年の背後の壁に無数の弾痕が刻まれていく。ふらふらと躱す少年に出来る限り照準をあわせながら、全ての弾丸を撃ち尽くす。 「――あははははは」 だが、銃弾の雨が止んだ後。 そこに立っていたのは、無傷の少年だった。 当たっていない。 一発も。 RPで傷が回復したわけではないのは、衣服にも弾丸による穴が開いていないことで理解できる。本当に、掛け値なしに当たっていないのだ。 あの銃弾の嵐の中――、一発も当たっていないなんて。 回避性能が高いなんてレベルの話ではない。 回避の問題じゃない。 どう言う――ことなのだろう。 これは。 これじゃあ。 まるで――
/177ページ

最初のコメントを投稿しよう!